手回しオルガンNEW!

MUSICA

小田急百貨店で夕食を済ませて駅の反対側のバス停に向かって行こうとしたとき,駅の一角で賑やかそうな音楽を演奏していた。手回しオルガンだった。

最初は「えらく大げさな装置だな」ぐらいにしか思っていなかったのだが,何曲か聴いてみると,こんなカラクリに過ぎないとしか思えない装置から,「音楽」が聴こえてくるのだ。

足を止めて少し聴いている人もいるが,多くの通行人はただ過ぎ去っていくだけだ。まあ,駅はそれぞれ用事がある人たちが集まってくる場所なのだから,そういうものなのだろうが,そんな中,私はずっと聴き入っていた。

ときおり親子連れが足を止めてアンコールをすると,自分で演奏させて貰えるようだった。私もずっと見ていたので,何度か誘われたが,そのときには音の機構に興味があったのでついに演奏しそびれてしまった。

話を伺ってみたところ,実は普段は空調の設計をやっておられるとかということで,趣味でこれを自作したらしい。それだけでも驚くべきことなのだが,音色や響きが素晴らしい。

調律についても,ご本人はアバウトだと言っておられたが,完全な12平均律ではなく,それぞれ若干ずれていながらも,全体として纏まっているからこそ,温かみのある響きになるのだろうと思う。

音響学的に厳密に整律することは,決して「音楽」の本質を成すのではない。

レパートリーも広く,いかにも手回しオルガン用の曲といったものから,現代のアニメ音楽やポップスに至るまで,無理なく奏でていた。

プログラム(メニュー?)のところにあったQRコードから,専用チャンネルにアクセスでき,実際の演奏動画を聞くことができる。

これは少し前に全世界的に流行り,若い世代が自作ダンスを振り付けて踊っていた,かの『可愛くてごめん』だ。

こういう曲は,ある意味で挑戦的なところもあるだろう。だが,次の『人生のメリーゴーランド』はどうだろうか?

この限られた小型の装置で,ここまで多様な響きを奏でることを誰が予想できるだろうか?

このまま何時間でもずっと聴きっていたかったのは山々やまやまである。帰宅して明日までに間に合わせなければならない用事があることを憾みながら,その場で別れを告げた。

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