相談メール
近代美学のことである先生からメールで相談があったのだが,どうすればよいのか考えている。
「美学」というのは西洋の学問的伝統から見ると,比較的新しい分野である。というのも,中世では「美」といった場合(古代においてもプラトン以来),「超越者」に関わる「善美」なるものについてのみ適用されるものであって,近代において,それは「感覚(感性)」に根ざすものとなった。
そうすると,「感覚(感性)」の身分が明かされ,それが古代・中世において以上に高く評価されるようになって初めて成立したと言える。
別な言い方をすれば,中世までは,「感覚(感性)」は「知性(理性)」に鋭く対置され,またその意味での「美」は単に「快」と表現された。従って,これを担う学問分野は「修辞学」であった。
近代において「感覚(感性)論」が独り立ちするためには,「感覚生理学」の誕生と,これを基礎とした「快」の分析を経る必要があった。これを担ったのはまさにデカルトの『情念論』であった。ここから「美学」が誕生するためには,これが再度「形而上学」化されなければならない。
ライプニッツ=ヴォルフ学派
従って,例えば,デカルトからカントまでの「美学」を系統付けるならば,どうしてもライプニッツ=ヴォルフ学派を語らざるをえなくなってこよう。しかし,私は,ライプニッツ研究者のうち,「美学」をきちんと論じられる人物を,知らない。
そこで,更に,参考となるべき書物を,と思ってみたところで,そもそもライプニッツ関係の書物すら手元に満足にない。
その満足にない資料の中で,米山優『モナドロジーの美学 — ライプニッツ/西田幾太郎・アラン』(名古屋大学出版会,1999年)が気にかかったので,それを斜めに読んでみた。この方,ライプニッツの著作自体を翻訳なさっておられる方なので,原典をきちんと読めるのだと思う。しかし,この著作を読む限り,解釈する上で概念が少し横滑り気味かな,とも思う。
とは言っても,この人以上にライプニッツを中心とした美学思想を語れる人は,ということになると,思い付かない(つまり,私は知らない)。
スピノザ美学
そういえば,スピノザの美学をやっている人は,いるんだろうか。スピノザを使って何か美的なことについて述べる人はいても,スピノザそのものの「感性論」について纏めている人ってなると,私はライプニッツ研究における以上に知らない。
そもそも,哲学畑の人って,きちんと「美学」そのものを勉強しないから,研究というレベルになると,とても居そうに思えない。
旧ウェブ日記2008年8月23日付