Aglio, olio e peperoncino

PRIVATÆ

先週予約を入れておいたイタリア家庭料理店で昼食をとった。

うちから歩いて行くには少し遠い距離にあるので,いつもタクシーを使うのだが,昨日から近くの幹線道路が酷く渋滞していて,電話予約したタクシーの到着が遅くなり,店に着くのもすっかり遅くなってしまった。

明日で,今度こそ本当に閉店になるというので,これがこの店で食べる最後のランチになる。いつも通りのコースにした。

窓際の席になることが多いのだが,今回は久しぶりに奥の席になり,写真を撮ると光線の加減で前回とは映り方が異なる。 先ず,サラダ。

自家製チーズパン。その時々の環境条件で,チーズが吹き出すことがあるのだが,香ばしい味になる。

実は,注文内容の関係で,このチーズパンはパスタの後に来た。というのも,メニューにはないのだが,特別にパスタをペペロンチーノにして貰ったからだ。

今日も娘さんが給仕をしておられたのだが,この特別メニューを出して貰えないか訊いてほしいと,ダメ元で言ってみた。

すると,程なくして厨房のほうで「ダメだ,ダメだ。」と声が聞こえ,戻ってきた娘さんが「やっぱり難しいみたいです……」と伝えて下さったのだが,その直後にシェフが顔を見せて「やっぱりやります!」とわざわざ言って下さったのが可笑しかった。

実は,ペペロンチーノはパスタ料理の中で最も技術が要求されるものの一つで,これだけで料理人の腕がわかると言われたりしているものなのだ。そして,シェフ一人で全部のメニューを熟していて,しかも狭い厨房で一つのフライパンを使って調理しているため,味付けや火加減等々の関係から,予定外のメニューを入れるのは極めて困難なのだ。

しかし,偶々たまたまタイミングがよかったらしく,この変則的な注文に対応してくれた。

この店を知ったばかりの頃に何度か食べたことがあるのだが,このレベルのペペロンチーノを味わうことは,この先も叶わないだろう。本当にこれが最後のペペロンチーノになる。実に美味かった。

〆はベルギーアイスとイタリアンロースト。

ついでに,いつもテーブルにある飾り物。これを見るのも最後になる。

そういえば,先日この店で知り合った高校教諭の方は,学校関係者の方々を呼んで最後の会食を楽しんでおられたようだ。また,帰りがけに挨拶された。

週明けには原状回復工事に入るため,食器類を処分することになるので欲しい人に分けるということだった。

このお店,そしてシェフやその家族との出会い,また,そこで過ごしたささやかな時間の思い出のためにも何か頂ければとは思うのだが,その時間がとれるかどうか……

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