確定
毎学期のことであるが,受講者というのは履修登録の修正が終るまで確定しない。
共通科目であれば,学生自らが履修したいかどうかに任せ,後は一方的な講義をすればいいからそれほど問題は生じないが,白金校舎で担当している「哲学(専)」と「教養原論」の場合,下手にゼミ演習に近い形態をとっているために面倒なことが生じる。
はっきり言わせて頂けば,ゼミ演習のほうが何十倍も楽である。何故ならば,初回講義の前に履修者が確定し,その一覧ができあがっているからである。
ところが,私が担当している上記の科目は自由選択であるために,履修登録期間を過ぎて,更に,5月半ばにならなければ一覧も手に入らない。
特殊性
困るのは,「教養原論」の場合には,学生が教務に直接申し出ても受付けて貰えず,担当教員が一覧を提出して登録するというシステムになっているということだ。
「教員が一覧を提出するのだから楽なのではないか」と思うのであれば,そして,それが教育職についている人間の判断であるとすれば,その人間の想像力の欠如を嘲笑うべきである。
それでは,担当教員は「当該の学生が履修を希望している」ということを,いつ・どこで知ることができるのだろうか?
確かに,彼もしくは彼女が初回の講義にいたかもしれない。しかし,ガイダンスを受けてみて履修を希望しないということもありうる。当然,履修登録修正の期間中,考えたいという場合もありうる。自由選択科目なのだから,学生側の当然の権利であろう。
そして,初回に来た学生が第2回目に来なかったとする。教務への名簿一覧提出は,第2回目を終えた直後である。そのとき,初回に来ながら,次の回に来なかった学生の意思をどのように確認すべきだろうか。
ちなみに,現在,教員側がある学生に連絡をとりたい場合に,教務に当該学生の連絡先を尋ねても,個人情報であるという理由で拒否されることになっている。電話番号もメールアドレスも一切教えてはくれない。
学科のゼミであれば,一々こんなことに気を使うなどという馬鹿げたことは一切生じないだろうに。
メールアドレス
そして,やはり憂えていた通りのことが,今日,早速,起った。その際,念のためにと初回講義でガイダンスのリアクションペーパーを書いて貰ったときに一緒に記して貰ったメールアドレスが役立った。
だが,やはりそうやって一時的にえた個人情報というのは不正確であり,当人とは関係のない他の複数の学生に,僅かながら文面を変えて尋ね,それらの整合性によって判断することになる。場合によっては,当人がメールアドレスを間違えている可能性もあるためだ。
しかし,直接は関係のない学生が,他の学生のことについて学期始めからメールで尋ねられるなど,余り気分がいいものではないだろう。
私としては,当人に直接の利害に関わる問題ではない限り,教員側から学生に個人的なメールを出すべきではないと思っている。それを安易に許すことによって,プライバシーの侵害,場合によっては,ストーカー行為やハラスメントへ発展する要因を作り出すと思う。
人間は常に理性のみによってのみ動くものでもなく,ときとして,感情に突き動かされることがあるというのもまた事実であるのだから,少なくとも,私にはその様な迷惑行為を絶対に犯さないという自信はない。
しかし,それでも,履修登録修正の期間が過ぎてしまったものについては,登録の修正がきかない。そのために,尚一層,この第2回目の講義を終えた直後というのは,神経を磨り減らすことになる。
現に,白金校舎から帰宅した後,まだ殆んど初対面に近い2~3の学生にメールを送らざるをえなかった。
対応してくれた学生の側は,全くそんなことを気にもしていないのかもしれない。むしろ「先生がメールしてくれた」ということを喜んでいるかもしれない。それは個々人の感情の問題ではあれ,その行為自体は余り好ましいことではないと,私は考える。
うらやましい人々
その様な配慮も全くせず,また,その様な配慮が必要であることも起りうるということも全く思い至らず,自らの学科の適当なゼミ方式からしか類推できずに「少人数のゼミ形式でいいですね」と安易に口にできるほどお気楽な人達がうらやましい。
旧ウェブ日記2006年4月19日付