講義概要

MGU

皺寄せ

来年度の講義概要を作成せねばならない。私は毎年 Web 入稿システムを利用しているので,タイムリミットは18日(水)である。横浜校舎開講分は例年通りとして,白金校舎分をどうするか困っている。

一つは「哲学(専)」で,これは教職科目になっているために,全学共通科目の「哲学」・「論理学」・「倫理学」のうちから4単位を取得していることが履修条件になっているのだが,しかし,この「単位を取得している」ということが「履修内容が身に付いている」ということではないから困るのだ。「履修内容が身に付いている」のであれば,その上に立って更に高度な内容を提供することは可能であろう。

ところが,思想史の基礎知識も論理学の基本法則も形而上学的基礎概念も何も身に付いてない受講者が履修するために,結局,1・2年生向けに開講している内容をそのまま講義したほうがずっと楽であろうと思われるのである。

大学側は文科省に対しては,「共通科目よりも高度な内容を提供する」ことを前提として教職科目のカリキュラムを組み立てていることにしてあるというから,現場でそれを担当する側も,その契約通りの内容を提供する努力をしているのだが,そもそも大学側は「教養教育」において「哲学」などどうでもいいと思っているのであるから(その程度の「教養」の把握しかしていないのであるから),もともと「基礎教養」に欠ける学生を量産し,その「皺寄せ」が思想系科目にくるわけである。

ゼミ担当から排除される

更に,もう一つの「教養原論」に関しては,もっと凄い現状になっている。

実は,来年度から廃止されることに決定していたのであるが,私が学部で担当するコマがなくなってしまったために,急遽,来年度に関しては開講することになったのである。

本来,私の様な学部分属者は,共通科目のコマに加えて,所属する学部のコマを担当することが申し合わせで決められている。つまり,私は文学部フランス文学科の成員であるのだから,フランス文学科のゼミを担当するべきはずであった。

ところが,これまで「一般教育部」に所属していた段階では,「哲学(専)」が「文学部共通科目」に数えられ,これが所属する学部のコマとして扱われていたわけであるが,昨年度,「哲学(専)」を「全学共通科目」の特別枠として扱うという申し合わせをし,その上で,私が来年度からフランス文学科のゼミを担当するということで了承を得ていたにも拘らず,昨年の秋にゼミの内容を提出しようとしたところ,フランス文学科の方では私を加えるのを忘れていたというのである。

これにはオマケがついて,フランス文学科のゼミとして行うべき担当枠1コマがなくなったのだから,何でもいいから別にやって頂きたいというのだ。

更に,とんでもないことに,後に,この1コマを巡って,同じ学科に属しているある教員から,「法学部の方では何かやるコマがあるんでしたっけ?」と真顔で尋ねられたのである。

所属している学部で担当せねばならない1コマが,何故,何時の間にか所属もしていない他学部のコマに変わっているのだろうか。

無責任

とにかく無責任な人間の中で無責任な人間に左右されて仕事をせねばならないから,必要のないストレスがたまるばかりである。

たかが1コマの問題と考えるかもしれないが,「思想系科目」を真面目にやっている人間であれば,これが「たかが」では済まされないことであることくらいは判断できるであろう。

それが判断できないのは,所詮,何コマやろうと変わりないような適当な講話のみで講義時間を終わらせることしかできないからであろう。だが,「推論の正当化」を問題とする様な内容を,テキストももって来ない様な聴講者に対して,コマ毎にテーマを分けて毎回毎回講義するなどということは,殆ど拷問に近い。

真面目な聴講者の感想では,明学に入って以来,初めて「大学らしい」講義を受けたということである。「コマ数」の問題ではなく,「密度」の問題である。「たかが1コマ」と考える御仁は,この「密度」について考えたこともないのであろう。

そんなこんなで,無責任な人間らが無責任に任せるコマに対して,どうやって責任をもってやろうか憂えている最中である。


旧ウェブ日記2006年1月7日付

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