今年度をもって脇田良一学長が辞職なさる。その送別会が行われた。
私が脇田学長にお会いしたのは,本学に赴任したばかりの年に,その所属先である「一般教育部」がその年度をもって解体されるために,所属教員は学部に分属ということになり,我々新人3名が懇談会という名目で呼び出され,新たに設立される予定である教養教育センターへの移籍を促されたときのことであった。勿論,このとき我々3名は,本学に赴任して最初の謀反を犯すことになるのではあるが……
そのような意味で,私が本学に赴任して以来,脇田学長は,私にとって単に「学長」という以上の存在であるし,脇田学長の側からも,私は特殊な存在であったろう。
現に,一教員に過ぎない私と何らかの機会にお逢いするたび毎に,挨拶をしてくださることが多かった。それにどういう「感情」が伴っていたのかを詮索してもしょうがないだろう。学長からすれば,ただ私が印象的であったという,ただそれだけのことであったのかもしれない。
そこで交わされた僅かながらの会話も,とくにあってもなくてもいいような類の内容であったかもしれない。私もただでさえ数が少なかった会話の数々のその内容については,少々の言葉のやりとりを朧気ながらに記憶しているだけであり,その前後は殆ど思い起こすことができないでいる。しかし,私は,その度毎に学長が見せる悪戯っぽい愛嬌のある笑顔が大好きであった。
学内でお会いできなくなるのが残念だ。だが,日本の発展のために,その天才的な実務能力を役立ててほしいと思う。
旧ウェブ日記2004年3月29日付