水星の留
太陽に最も近い内惑星である水星が11月26日から射手座で「逆行」していたが,昨日12月6日に「留」を迎え,順行に変わった。
天文学と占星術
惑星は,その名の通り,地球からの見掛けの運動は複雑であり,その為に人間が天体観測をしたそのときから頭を悩ませてきた問題であるが,自然科学が進歩して数学的モデルの中で観測し予想が可能となり,しかも今では,その美しい軌跡を画像として誰もが見られるようになったということは幸せなことだろう。
ただ,こうした「天文学」における計算結果に基づき,象徴的意味を付与していく「占星術」にとっては,単なる空間的位置関係が問題なのではなく,それが人間社会に実際に及ぼす影響力(influxus)に関心をもつ。
ここまで天体運動について数理的に解明されてしまった現代では,迷信として一掃されてしまう運命ではあろうが,それでも,こうして見掛け上の軌跡の神秘的な美しさに触れると,そうした気分もわからないわけではない。
異端狩りの時代
ただ,未だ現代科学によって解析され解明された成果を知ることもできなかった時代に生き,こうした惑星の運動に取り憑かれ,無謀で無意味な挑戦に生涯を捧げるような人生を送ることがなかったということだけでも,感謝しなければならないだろう。
ちなみに,最近話題となっているこのコミック — そして,それに基づくアニメ作品 — のことに一言触れれば,少なくとも15世紀において「天文学」に対する迫害などなかったし,歴史上最も「異端狩り」の厳しかった17世紀にあっても,ガリレオ・ガリレイの裁判が一際目立つものの,それを理由とする拷問や処刑などは一切なかった。
この初期近代に問題とされたのは「神学」の世界観に対する過激な解釈であり,その端的な例は,ジョルダーノ・ブルーノの焚刑である。しかし,形而上学的にはデカルトの哲学説は,この当時最も過激であったはずであり,その意味で,デカルトが以後の世界観に齎した影響は計り知れないだろう。
コメント